構造(Structure)

誰でも楽しめるヨット、ハンザ

ヨットの中でも小型の1~2人乗りのものを『ディンギー』と呼びますが、これは簡単に操れるものではありません。そこで、オーストラリアのクリス・ミッチェル(Chris Mitchell)氏が『誰でも乗れるように』と考案したのがハンザです。
このハンザは、子どもから高齢者の方、障害者の方も難しい練習などをせずに簡単に帆を操って船を走らせることができます。
2001年4月には日本初のセイラビリティが設立され、国内のハンザの普及がスタート、社会福祉として大変有意義な活動になっております。
 
次に、ハンザについてご紹介します。

 
セーラーは、艇の低い位置に座るので、とても操縦しやすく安定性に優れています。
また、ナイロンの帯紐で作られているハンモックのようないすに座り、センターボードケースの両サイドに足を投げ出すこともできます。
なお、ソケットに差し込まれたマストは、リーフドラムが取り付けられていますので、砂浜の上に乗り上げておくときは簡単にセールを巻くことができます。
 

 
 
 
安全性(Safety)

ハンザの安全性

1.重いセンターボード(キール)を艇全体の重心を水中の低い位置に下げており、転覆の心配がありません。
ハンザのセンターボードは艇の大きさに対して重く長いため、他のヨットに比べて特に安定した帆走ができます。乗艇者はバランスのために艇の外側に身を乗り出す必要はありません。
2.ハンザは、座面が深く設計されているので、海に落ちることはありません。ボートの深い位置に座るので重心が安定し、操作しやすくなっています。電動サポートを着用すれば、手を使って思い通りに操縦できない方でも操作・帆走できます。操作はジョイスティック(舵取りのための棒)とシート(ロープ)のみです。また、ブーム(帆桁)が頭の上を通過するため、当たる心配がありません。
3.操縦者は、ハンモックのような椅子に腰を下ろし、もたれかかります。操縦席からセンターボードケースの方へ、足をいっぱい伸ばして座ることが出来ます。
ハンモックの構造は乗艇者の座る位置を低くすることで艇を安定させるとともに、船底に水が溜まっても座面が宙に浮いているため、お尻が浸からない快適さも備えています。
 
4.二人乗りの場合は、前向きに並んで座ります。お互いの動きがよくわかり、操船の役割交代も容易に行えます。また、座ったままでセールの角度や張り、大きさなどを調整できるよう、手の届く範囲にシート(ロープ)類が配置されています。

 
 
 
考案者(Designer)

ハンザの考案者

 

ハンザの考案者クリス・ミッチェル(Chris Mitcell)氏について紹介します。
同氏は著書「GET YOUR BUM WET AGAIN」(西井伸嘉編)の中で次のように述べています。
 

 

 私たちが繰り返しそうではないと言っているのに、なぜ人々がアクセスディンギーはハンディキャップのある人のために特別にデザインされたヨットだと思うのか私にはわかりません。そこで本書の読者だけにはそのことを正しく理解していただけるように説明したいと思います。
 
 ユニバーサルデザインとは、たとえば大きなパドル型の電灯用スイッチ、普通より幅の広いドア、階段にしないでスロープにするというように誰もが使えるように設計することを言います。このちょっとした変化は障害を持っている人だけでなく、小さな子供からお年寄りまで、または乳母車を押すお母さんのようなあらゆる人の生活をずっと楽にしてくれるものです。
 ユニバーサル・デザインは誰をも差別しない、まさに実用に即したデザインであり、アクセスディンギーはユニバーサル・デザインの優れた一例です。そして「Sailability セイラビリティ」も、誰もがアクセスできるプログラムという点でユニバーサル・デザインのすばらしい一例なのです。
 
 事実、アクセスディンギーはヨットに乗りたいと思っていても体力的に自信がなかったり、操作が複雑だったり、お金がかかるという理由で一歩を踏み出せないでいるといった人口の大多数を占めるセーリング未経験者に特に喜ばれるようデザインしました。私たちは誰でもセーリングできるようにしようと活動していますが、私にとってはそれはとても簡単なことです。アクセスディンギーのような小さなヨットがセーリングの入門艇としてもっと広く使われるようになれば、新しいセーラーが大勢生まれて、今日のようなヨット人口の減少は起こらないでしょう。さらに私たちはヨット人口の減少をくいとめるだけではなく、アクセスディンギーが万人向けの艇であるところから、あらゆる障がいのある人々が参加できる完全に融合したレクリエーションの機会を提供できるようにしようとしています。それが実現すれば素晴らしいことです。皆と肩を並べて参加できることが障害者の方々の望みではないでしょうか。
 
 そんなエレガント・ソリューション(解決法)には誰もが納得するとお思いでしょうが、どういう理由からかそうではないのです。納得しないセーラーの数の多さにあなたは驚かれることでしょう。考えてみると、アクセスディンギーは身障者のヨットだと言っているのは、だいたいがセーラーたちです。なぜでしょう。
                        クリス・ミッチェル

※アクセスディンギー…ハンザのこと。2015年に名称が変更されました。

 

1. Art&Spot基金で、ケンプ上院議員へハンザの操作説明をするクリス・ミッチェル氏
2. オーストラリア前首相ジョン・ハワード氏より表彰
3. オーストラリア・メルボルンのハンザ製作所

 
 
 
艇種(Classes)

ハンザの各艇種の紹介

Hansa2.3
20kgのセンターボードがつき、ジョイスティックで舵を取り安定した帆走ができます。
障害を持つ人・幼い子供から高齢者にまで、安定したセーリングができます。
仕様
全長:2.3m
横幅:1.25m
深さ:0.9m
重量:52kg(+キール20kg)
セール・プラン:キャット・リグ
セール面積:3.8㎡
マスト:4.2m
耐重量:120kg
Hansa303
Hansa 303は、より真剣にセーリングしたい人たちのために開発されました。2枚帆でマストも高く、重いバラストジブも加えられました。Hansa 2.3と同じ設計なので、非常に安全でセーリングも簡単です。
仕様
全長:3.03m
横幅:1.35m
深さ:1.1m
重量:62kg(+キール30kg)
セール・プラン:メインセール、フリースタンディング・セルフタッキングジブ
セール面積:メイン4.4㎡、ジブ1.4㎡、全面積5.8㎡
マスト:メイン4.75m、ジブ2.85m
耐重量160kg
Liberty
Libertyはとても早く、能力に関わらずとても操縦しやすい最先端のハンザです。極端に傾いて舵が進みたい方向に向かっている間も、コーミングと両サイドのデッキどちらも浸水することはありません。
70隻以上のリバティーは12カ国以上で使われ、国際セーリング連盟(ISAF)に賞賛されています。
仕様
全長:3.6m
横幅:1.35m
深さ:1.1m
重量:72kg(+キール72kg)
セール・プラン:メインセール、フリースタンディング・セルフタッキングジブ
セール面積:メイン5.6㎡、ジブ1.75㎡、全面積7.35㎡
マスト:メイン5.6m、ジブ3.15m
耐重量:150kg
SKUD18
SKUD18は、小型モーターボートの補助装置を装備し、左右対称ではないリグ装置を固定するのに高い性能を持つヨットで、世界パラリンピックの競技種目です。
障害を持つ人も持たない人も、平等に競技することが特に歓迎されています。
仕様※
全長:5.8m
横幅:2.2m
深さ:1.75m
重量:170kg(+キール163kg)
セール・プラン:2枚帆
セール面積:10.5㎡
マスト:デッキから6.83m上にあるカーボン/GRP
耐重量:250kg

※HSJより

 
 
 
クラスルール
( International Hansa Class Association)

 
 
 
普及活動
(Dissemination Activities)

ハンザの普及活動

 オーストラリアでバリアフリーのために開発されたハンザは、世界中全ての人にセーリングを楽しんでもらえるよう、元オーストラリア総督ウィリアム・ディーン卿の後援を受け、オーストラリアのみならずイギリスでの普及と多くの国で活動が展開され、イギリスでは「Sailability セイラビリティ」の語が生まれるほどに親しまれています。
 日本では考案者クリス・ミッチェル氏のポリシーを受け継いで、2001年4月には日本初のセイラビリティが設立され、国内のハンザの普及がスタートしました。
社会福祉として大変有意義な活動になっております。
 ハンザのSKUD18は、2005年11月にパラリンピックの種目として選ばれたことにより、これからさらに和を拡大し、誰もが参加してハンザをコミュニケーションツールとして海を楽しみ、自然環境との融和を通じ、青少年の健全な育成はもとよりお年寄りまで年齢・性別を問わず地球に優しい社会貢献に取り組むために発足されました。

 当協会は、全国各地でハンザの利用地域社会に貢献されている皆様の支援活動を、地球環境保護に参加する企業および関連団体のご協力を広く求め、メディアを通じ、この素晴らしい活動をより多くの方々に知っていただき、体験していただけるよう働きかけております。